実務経験のない新入社員にシステム開発の全体像や設計において重要な点を伝えるのはとても重要なことである一方で、とても難しいことでもあります。レヴィはゲームを用いた導入教材とビギナーでも取り組むことのできるシステムデザインの演習を組み合わせることで、この課題をクリアする新入社員向けの研修プログラムを開発しました。今回は、そのプログラムの初めての提供先となった株式会社アクシス様の事例を紹介します。
ソフトウェア開発を扱う企業の新入社員向け研修では、仕様書の書き方やプログラミングのスキルなどに焦点が置かれがちです。しかし、価値を生み出すことのできるエンジニアとして成長するためには、システム開発の全体像と各プロセスの意義をしっかりと把握し、設計において注意・意識すべき重要な点を理解する必要があります。そのような能力はOJTや実務の中で時間をかけて育成されるのが普通でしたが、競争の激しい昨今の状況では、そのような機会を十分にとれない場合や、より短い期間での育成が求められる場合が増えてきました。
上記のようなニーズに対してレヴィでは、ゲームを用いた導入教材やシステムモデリングを実践的に体験するビギナー向けワークショップを開発し、実務経験のない新入社員でもシステム開発の全体像や重要な点を効果的に理解することのできる研修プログラムを構築しました。研修の目的としては、以下の3つをあげています。
このプログラムの初めての提供先は、鳥取県でシステム開発やソリューション事業に取り組む株式会社アクシス様となりました。事業の成長に伴い多くの新入社員を迎え入れ、その人材育成に力を入れている会社です。今回はアクシス様の新入社員を対象に実施した研修プログラムを事例として、その構成や様子を紹介させていただきます。
今回レヴィが提供したプログラムは、アクシス様の新入社員向け研修全体のうち、導入の部分に位置づけられました。レヴィのプログラムでシステム開発の全体像と基本的な考え方を学んだ後、プログラミングのスキルを身につけたり、チームによるシステム開発を実践するプログラムへと進みます。このような構成にすることで、プログラミングのトレーニングやシステム開発の実践演習の中で、単に言われたことに沿って手を動かすだけでなく、常にシステムデザインの観点からその位置づけや意義を考えることができるようになり、より効果的な人材育成が可能になると考えました。
アクシス様の事例においては、次の3つをプログラムの目的としてあげました。
2日間の期間で、次のようなことに取り組みます。
※ 研修の内容や構成は要望に応じてカスタマイズすることも可能です。
プログラムは、レヴィのオリジナルボードゲーム「ペジテの自転車」を使ったシステム開発の疑似体験からはじまります。プレイヤーは自転車メーカーの新製品開発チームのメンバーになりきって、顧客要求に基づいて自転車を設計していきます。ゲームの中では突然の要求変更や外部環境の変化などが起こり、実際のシステム開発で起こり得る様々な場面を体験することができます。
ゲーム教材を活用することで、実務経験のない新入社員や経験の少ないビギナーエンジニアでもシステム開発の流れと難しさ、気にすべき重要な点などについて実感することができます。ゲームを通して体験したことや、ゲームの中で登場する用語などが、後に続くレクチャーや演習における学習の基礎となります。
ペジテの自転車については以下のブログでも紹介していますので、ぜひご覧ください。
「皆さんがペジテの自転車の世界で取り組んだことは、システムデザインの基本です」という説明から始まるレクチャーで、システムデザインやシステム思考の基礎を学びます。ペジテの自転車を振り返りながら、システム、ビュー、モデルなどの重要な概念について意味を確認していきます。
次はいよいよ、参加者自身がシステムモデルの構築を実践する演習に取り組みます。ソフトウェアの設計の最初期段階で特に重要なビューとして「コンテキスト」「業務フロー」「画面(UI)」を取り上げ、それらに対応したモデルを構築することで上流設計を体験します。
しかし、実務経験のない新入社員の皆さんにいきなり「上流設計をやってください」と言うのはハードルが高いです。一方で、コンテキスト分析や業務フロー形式化について細かい説明をしても、その位置づけや意義が分からず退屈なものになってしまいます。そこでこの研修では、まずは「模倣する」を基本にして一通りの上流設計を体験します。レヴィ側で用意した簡単な例題(アクシス様の事例では「大学の授業についての情報を共有するアプリ」)に基づいて、例を模倣する形でモデルを構築していきます。模倣しながらグループで議論することで、次に取り組む「上流設計モデリングの演習」に必要な視点と理解を得ることができます。
研修プログラムのメインとなる部分は、上流設計モデリングの実践です。一つ前のパートである「上流設計モデリングの体験」では例を写すという形でワークを進めましたが、実践の方では各グループで自分たちのアイデアや意思を反映した上流設計に取り組みます。
アクシス様の事例では、その後の新入社員研修で開発に取り組む予定の「地元サッカークラブチームの応援サイト」を題材としました。応援サイトにはどのようなステークホルダーがいるのかを考えるコンテキスト分析からはじめて、コンテキストモデル、業務フローモデル、画面プロトタイプを各グループが構築しました。
研修の終わりには、上流設計モデリングの成果と研修で得た気づきや学びについて、各グループから全体に向けて発表します。成果と学びを共有し、講師からの問いかけや会場との議論を通してさらに学びを深めることができます。
研修後にご回答いただいたアンケートより、ご意見やご感想をピックアップして紹介します。
今回紹介したプログラムは、独自のボードゲーム教材やモデリングワークショップなどを活用した特徴的なものとなっています。新入社員やビギナーエンジニアを対象に、システム開発、システム設計の全体像や重要な概念を知って欲しい場合に特に有効です。同様のプログラムについて詳細な案内を用意していますので、ぜひご覧下さい。
アクシス様の場合と同じソフトウェア分野はもちろん、電子回路設計、IoTシステムの開発、組織開発など、その他の領域のシステムデザインについても同じような形のプログラムを提供することができます。ご興味・ご関心をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。