東阪エンジニアリング株式会社様は、電子機器のOEMを中心に、高い技術力を活用した様々な製品を開発・提供されています。そんな東阪エンジニアリング様を対象に、実際の業務の中でどのようにシステミング※を活用していくのかを体験できる「システミング体験ワークショップ」を実施しました。
システミングの基礎を簡単にご紹介し、用いる言葉に対する共通理解を築きます。特に大切なのが「ビューモデル」です。
複雑なモノゴトを扱うために、システミングでは「わけて、つなげて考える」というアプローチをとります。どのような視点に分解してモノゴトを捉え、どの視点とどの視点の整合性を気にしながら、システム開発を進めるのかを示したのがビューモデルです。
ビューモデルは、開発対象や開発チームの特性によって変わります。例えば、電子回路設計の場合は、下記のようなビューモデルになります。
多くの企業様では、ここまで分解せずに、「要求仕様」と「回路図(物理設計)」という視点のみで電子回路を捉え、エンジニアの頭の中だけで、整合性をとっています。この方法は、特定の製品開発に着目した場合には効率的なやり方なのですが、設計情報の属人化が生じてしまいます。担当者の高齢化や退職によって、設計情報の属人化は、手痛い事業課題となります。
一方で、上記のビューモデルでは、「コンテキスト」「利用シナリオ」「機能」といった視点が加わっており、顧客の期待と回路図までに飛び石となるような設計情報が置かれます。これにより、担当者以外にも設計意図などを共有しやすくなり、チームで設計を実施できる体制を築くことができます。
システミング体験ワークショップは、大まかに下記のような流れで、1時間半程度で実施しました。
以降、ワークで扱った内容について、少しだけご紹介します。
課題抽出ワークショップでも扱いますが、システミングの最初のステップは、システムコンテキストのモデル化です。システムを使って課題を解決したい顧客やシステムを利用するユーザーなどのステークホルダや、外部要素(コンテキストエレメント)をワークショップの中で洗い出していきます。
今回は、東阪エンジニアリング様のモータードライバを例にモデリングを行いました。皆様、積極的に取り組んで頂けました。
短時間のワークではありましたが、付箋を使って、下図のようなコンテキストモデルが出来上がりました。
モータードライバの仕様は、それが何の製品において、どのように使われるかによって決まります。利用のシチュエーションを整理し、可視化していきます。
利用シナリオは、ユーザーが具体的に製品を使って何を行い、どのような価値を得るのかを表現できるため、顧客の期待の整合性が確認しやすいモデルです。
また、利用シナリオを実現するために製品がすべきこと=「機能」との整合性も確認しやすいものになります。つまり、この過程で、しっかり利用シナリオに関する認識を揃えておくことで、適切な機能設計を行うことができ、「ほしいものはこれではなかった」という状況の防止につながります。
次に利用シナリオを実現するために製品がすべきことを洗い出していきます。ここで大切なのは、利用シナリオとの整合性が取れていることです。
利用シナリオを回路図を直接比べるよりも、機能という視点を介して比べることで、思考のジャンプが少なくなり、認識の齟齬を防ぐことができます。
最後に、主要な部品も定めた上で、回路ブロック図を描きます。機能を介することで、利用シナリオが実現できる回路になっているかを容易に確かめることができます。
この段階の議論で、「なぜそのような設計にしたのか?」という設計意図の共有が自然に起こり、いままで設計者の頭の中にしかなかった設計情報が、場に共有されるようになります。
ビューモデルに戻り、全体のビューとビュー間の整合性を俯瞰します。
具体的なビューから、抽象的なビューに立ち戻ります。具体と抽象の行き来を自然に行えるのが、システミングの特徴です。視座を高めることで、抜け漏れがないか、正しいシステムを作れているかを確認することができます。
このようにして、システミングの考え方を電子回路設計に応用する方法を短時間で体験することができます。
もちろん、体験して終わりではなく、実プロジェクトでシステミングを実践したり、システミングあるいはシステムデザインの観点から業務における様々な課題の解決に一緒に取り組むというのがレヴィのお仕事になります。
今回紹介したシステミングワークショップやシステミングの実践についてご関心・ご要望のある方は、お気軽にお問い合わせ下さい。