国立大学法人鳥取大学

システムデザインを学び、実践するプロジェクト型学習


システム化・複雑化が進む将来の社会において価値あるものを生み出し、活躍することのできる人材には、システムデザインの考え方やスキルが必要不可欠です。しかし、大学などの高等教育機関においてシステム思考やシステムデザインを実践的に学ぶ機会は多くありません。そんな中、鳥取大学ではレヴィが提案するシステムデザインのためのフレームワーク「システミング」とそれを効果的に実践するためのツール「Balus」を活用したユニークな実践型のシステムデザイン教育に取り組んでいます。

システムデザインを学ぶ機会

モノゴトをシステムとして捉え、価値あるシステムを実現する「システムデザイン」の考え方やスキルは、ますます複雑化・システム化していく社会においてとても重要です。特に、将来の社会像として構想されているSociety 5.0※1やSDGs※2を実現するためには、高いシステムデザインの能力を持った人材の育成が不可欠です。

しかし、大学などの高等教育機関においてシステム思考やシステムデザインの方法論を学んだり実践したりする機会は意外なほど少ないのが実情です。そんな中、レヴィの創業メンバーが教鞭をとっている大阪府立大学や鳥取大学においては、レヴィが開発したフレームワークやツール、教材を活用したユニークなシステムデザイン教育が展開されています。

Balusを使ってシステムモデリングに取り組む学生

今回はそのうち、鳥取大学において実践されているシステムデザイン教育について、いくつかの例を紹介します。いずれも鳥取大学工学部ものづくり教育実践センターが提供しているPBL※3授業の一環として行われているものです。

※1 Society 5.0:社会に埋め込まれ、高度に接続されたICTシステムが経済や生活を豊かにする社会。内閣府によって策定された科学技術基本計画において将来の社会像として構想されている。
※2 SDGs:「持続可能な開発目標」の略称。国連サミットで策定された国際社会共通の目標であり、17のゴールや169の達成基準などから構成される。
※3 PBL:Project-Based Learning(課題解決型学習)の略称。学習者が主体となって課題の解決活動に取り組み、その過程で知識やスキルを身につける実践的な学習・指導方法のこと。

まずはゲームで体験

実務経験のない学生さんたちがシステムデザインを学ぶ最初のハードルは「システムデザインの重要性や必要性について実感がわかない」ということです。ものづくりや問題解決において、そもそもどんな難しさがあって、どんなアプローチが必要なのかを知らない(経験がない)のです。

そこで、システム開発を疑似体験できるボードゲーム「ペジテの自転車」の出番です。プレイヤーは自転車メーカーの新製品開発チームのメンバーになりきって、顧客満足度の高い自転車を開発することを目指します。ゲームの中では突然の要求変更や外部環境の変化などが起こり、実際のシステム開発で起こり得る様々な場面を体験することができます。

ペジテの自転車をプレイする学生たち

ゲーム教材を活用することで、実務経験のない学生でもシステム開発の流れと難しさ、気にすべき重要な点などについて実感することができます。ゲームを通して体験したことや、ゲームの中で登場する用語などが、後に続く実践的な学習の基礎となります。

ボードゲーム教材「ペジテの自転車」については以下のブログ記事でも紹介していますので、ぜひご覧下さい。

システミング入門

レヴィが提案するシステミングは「誰でも上手にシステム思考やシステム工学を実践することができるフレームワーク」です。「誰でも」ということは「学生でも」ということです。

システム思考やシステム工学についての解説や参考書は世の中にたくさんありますが、学生やビギナーエンジニアにとっては内容が難しかったり、実践とつながっていなかったりしてハードルが高いものも多いです。システミングはそれらのエッセンスを抜き出し、絵的に分かりやすく、すぐに試行できる形で整理したフレームワークなので、学生や初学者がシステムデザインに入門する際には最適です。

今回紹介している鳥取大学のPBLでも、システミングを軸としてシステムデザインを解説し、プロジェクト活動の中で実践します。2020年度はコロナ禍の影響もあり、システミングの基礎的な解説は対面式の講義ではなくビデオ教材によるオンライン学習で行いました。ここではその一部をちょこっとだけお見せします(解説を聞く場合は音声をONにして下さい)。

ビデオ教材「システミング入門」の一部

Balusでシステミング

ペジテの自転車でシステムデザインの重要性と全体像を体験し、システミングの方法論を学んだ学生さんたちは、Balusを活用しながらシステムデザインの実践に取り組みます。

企業と連携した製品開発や地域の課題解決を目的としたシステム開発など、様々な形での実践に取り組んでいますが、ここでは2020年度の事例として「地域の問題を解決するためのIoT」をテーマにした授業において取り組んだシステム設計の様子を紹介します。

コロナ禍で対面式の授業が制限される中で、ちょうど2020年半ばにメジャーアップデートしたBalusがものすごく役に立ちました。Balusを介して学生と教員がリモートでコミュニケーションしながら、コンテキストや利用シナリオなどの視点でシステムモデリングを進めていくことができたのです。

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コンテキストモデル
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利用シナリオ
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受講生が構築したモデルの全体(ビューモデル)

Balusを使って「システムを外から見るビュー」のモデリングを進めた後は、システムのプロトタイピングに取り組みました。各種センサやマイコンを使ってIoTシステムの簡易実装に取り組みます。このとき「どのユースケースや機能をプロトタイプに盛り込むか?」「プロトタイプではどのデバイスをつかってその機能を実装するか?」などについてもBalusを使って整理しました(下図)。

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プロトタイプの構成モデル

プロトタイプの制作は様々な部品や機器を使用するのでリアルでの演習となりましたが、システムデザインの多くの作業はBalusを活用することでリモート授業の形で実施することができました。これは、ニューノーマルな時代におけるシステムデザインの教育や実践にBalusが活用できることを示しています。

授業の受講生である学生さんたちは、制作したプロトタイプのデモンストレーションと説明を、Balusのモデルを表示しながら行いました。システムモデルを使うことで、自分がつくったシステムの意図や振る舞いについて効果的に説明することができます。

Balus上に構築したモデルをつかってプロトタイプの説明をする受講生

他にも

ここでは紹介しきれませんでしたが、鳥取大学では他にも様々な形でシステムデザイン教育を実践し、Society 5.0のような将来社会で活躍できる人材の育成に取り組んでいます。それらについては、下記の記事などにおいて紹介しています。そちらも合わせてご覧下さい。

貴社でもいかがでしょうか?

今回紹介した事例は大学における学生向けの教育でしたが、同じようなプログラム、教材、ツールは企業におけるシステムデザイン教育にも活用することができます。ご興味・ご関心をお待ちの方は、お気軽にレヴィまでお問い合わせ下さい。