株式会社asken(あすけん)は、栄養学の知見とテクノロジーをかけあわせ、管理栄養士監修のアドバイスを通じて、日々の食生活改善をサポートするアプリ『あすけん』を提供しています。日本人の健康意識の高まりを背景に、アプリは継続的に成長し、累計1,200万人を超える会員の行動変容に寄与しています。
サービスの拡大にともない、社内では取り扱う情報の量や複雑さも増し、部署やプロジェクトをまたいだ議論や意思決定の場面で、「思考を整理し、共通認識をつくるための手段」がより一層求められるようになりました。
そこで導入されたのが、構造化ツール「Balus」です。導入初期には全社的なワークショップも実施され、個々の思考の可視化や、対話の質の向上につながる変化が各所で起きています。
今回、Balusを通じてどのように「考える力の底上げ」が進んだのか、そして社内のどのような場面で活用されているのかについて、株式会社asken創業者であり取締役の天辰様にお話を伺いました。
天辰さん
ITベンチャー・外資メーカー・コンサルティング会社での経験を経て、2007年に株式会社askenを設立しました。現在は主に経営戦略立案・アライアンス・データサイエンスなどの分野を担当しています。
askenでは、会社名と同じ『あすけん』という名前で、食生活改善アプリを提供しています。ユーザーが食事を記録すると、栄養計算が自動で行われ、管理栄養士が監修したアドバイスがアプリ上でフィードバックされる仕組みです。
ダイエットや健康管理を支援するアプリとして、おかげさまで多くの方に使っていただいており、「より健康になっていただくこと」を支援するのがメイン事業となっています。
天辰さん
Balusを試用させてもらって、そういえば「自分で考える、あるいは誰かと一緒に考えるためのツール」って意外となかったことに気づきました。近いところではホワイトボード型のツールを使っていましたが、機能が多すぎて余計なところに気を取られてしまい考えることに集中しづらいというのが難点でした。
なにより価格が高くて、全員にアカウントを配るのが難しかったこともあり、結果的に一部の人だけが使用し、そこに他の人がアクセスする、という限られた使い方になっていました。ワークショップの際に使うツールのような位置づけになってしまい、日常的に考えるためのツールにはならなかったんです。
そこでBalusの全社導入を検討しました。Balusは非常にシンプルで、余計な装飾や演出に気を取られずに済むので、考えることに集中できるのがありがたいですね。そして何より、全員が自分で使えることも良いポイントです。自分の思考を整理するためにビューを立ち上げたり、それを使って誰かに説明したり、一緒に構造を描きながら議論したりなどが自然にできるようになりました。
天辰さん
日本人は、教育過程でも社会人になってからでも、考える方法を学ぶ機会が少ないんですよね。正解のある問題に答えるトレーニングばかりが繰り返される。
学校でも会社でも、自分で目的・目標を設定したり、その目標達成のために必要なことを論理的に考えるなどの経験を積める場がありません。特定のテーマについて考えてもらっても、思いついたことをバラバラにアウトプットされるだけで、構造が整理できていない。
その結果、本人の中でも曖昧だし、情報を受け取る側にとっても何を言いたいのか分かりづらい。それでは正しい答えになる確率が低いですし、お互いも理解できないので、やはり論理の展開の順番の改善は必要だと常々考えていました。
そのため、報告や相談を受ける際には、「ちゃんとイシューを明確にして、ピラミッドストラクチャー型で話してね」と伝えています。また、僕がもともとコンサル出身ということもあって、社内にはイシューの設定、仮説思考、ピラミッドストラクチャーやロジックツリーなどの思考法を浸透させようと、様々なテンプレートや教育機会を用意してきました。
こういった思考整理の課題に対しては、一回Balusでラフに構造を起こしてから整理する、というプロセスがすごく有効だと感じています。
ちなみに、最近思ったのが「Balusを使って構造化することは、結局“考える”ことそのものなんじゃないか」ということなんです。理解する・考えるということは、テーマに関連する要素を洗い出して関係性を整理することと同義だよなぁと。
実際、そんな仮説をChatGPTに投げかけて、哲学・論理学・認知科学の観点から意見をもらったこともあります(笑)。ChatGPTからは「論理的ではない直感的な思考などがあるので思考は全て構造化とイコールとするのは強引」という指摘はありましたが、構造化が思考の非常に重要なパートであることは認めてくれました(笑)。
「考える」ということの本質は、やはり物事を分解して関係性を把握することで、それがまさにBalusを使ってしたいことと一致しているな、と感じています。
天辰さん
一番の決め手は、「誰でもすぐに使えること」でした。まず、Balusは見た目がとてもシンプルで、余計な装飾や演出が一切ないんです。だからこそ、操作に迷うことがなく、使い始めたその瞬間から“考えること”に集中できる。これが非常に大きかったですね。
導入後にレヴィさんに社内でセミナーを開いていただきましたが、その後、自然と色々な部署で使われるようになりました。ある日オフィスを歩いていたら、メンバーの3~4人に1人がBalusの画面を開いていた、なんてこともあって。強制したわけではないのに、気づけば使っている人が増えていった。
これは、僭越ながら「筋の良いツール」だからこその広がり方だったと思います。筋の良いツールであれば、あまり細かくガイドしなくてもみんなが勝手に使いこなしてくれる。逆に、使い方を何度も説明しないといけないツールは、結局あまり定着しないと思っています。Balusにはそういう抵抗感がなく、構造化するという行為そのものがスッと馴染む設計になっているので、広がりやすかったのではないでしょうか。
天辰さん
具体的な使われ方で言うと、多岐にわたります。例えば、戦略を考えるときや、説明資料を整理するとき、チームの目線を合わせたいときなど、思考を「構造」で共有したいシーンでは、ほぼ必ずBalusが活用されています。
特にエンジニアのメンバーがうまく活用していて、課題の整理や人員計画、プロダクトのロードマップ設計などにも使われています。頭の中にある情報を出して、「課題の要素を書き出して、関係性をつなぐ」。それだけで“見えてくるもの”があるので、わざわざ別のツールに移る必要がないんですよね。
以前よく使っていた他のツールだと、つい「見た目を整えたくなる」衝動が出てしまって、本質的な思考に集中しづらかったのですが、Balusは構造化に必要な要素だけが残っているので、そのシンプルさが、日常的な使いやすさにつながっていると思います。
天辰さん
業務効率という意味では、明らかに“手数”が減っていますね。例えば、発表要資料のスケルトン(スライドのページごとのタイトルのみリスト化するなどした、資料を作り込む前の全体構成整理)を作る際など、以前はノートアプリやPowerPointを使ってやっていました。しかし、現在はBalusで構造を整理しやすく、視覚的にページ間の関係も早くしやすいので、圧倒的に作業スピードが早くなったと感じています。デザインやページ構成に気を取られず、本質的な中身だけを考えればいいので、作業の負担がかなり軽くなりました。
定量的にすべてを測っているわけではないですが、感覚としては、Balusが適した業務であれば数割程度は工数が減っていると思います。もちろんBalusが直接関わっている範囲の話にはなりますが、従来のドキュメントやパワーポイントで同じことをやっていたら、もっと時間がかかっていたのではないでしょうか。
もうひとつ大きいのがオンラインでの共同作業のやりやすさです。戦略合宿でリアルに付箋を使っていたようなことが、今はBalus上で完結できるようになった。構造をつくっていく過程がそのまま議論になり、あとからそのビューを見返すこともできる。そういう「思考のログ」が残る点も、業務的には大きな価値ですね。
askenはハイブリッドワークを進めているのですが、オフライン・オンラインが混在する働き方にもあっていますね。(askenハイブリッドワークについての記事: https://note.com/asken/n/nab3b2267db13)
天辰さん
社員の「考え方」や「伝え方」が変わってきた実感はあります。具体的に言うと、もともと得意だった人はより精度が上がっていて、苦手だった人も確実に整理して伝える力がついてきていると感じます。
例えば、もともと構造的に考えることに長けていた印象がある社員の一人が、Balusを日常的に使うようになってから、さらに整理力や表現の精度が上がったと感じています。今では「しっかりしてるな」「彼に任せておけば安心だな」と思うシーンも多くなっていて、Balusの習熟がそのまま信頼感につながっている気がします。
一方で、構造的思考がやや苦手だった社員も、Balusを繰り返し使うなかで、徐々に「何を言いたいのかが伝わる」「話が整理されている」と感じることが増えてきています。少なくとも何が理解、整理できていないかが可視化されるようになりました。
こういう変化を見ていると、やはりBalusは「使うことで考える力が上がるツール」なんだと思います。スキルというより、“考えるという行為”そのものを支える道具ですね。
僕自身、最近では頭の中にBalusの構造を描きながら考えることもあります。将棋で言うところの「頭の中の将棋盤」みたいなイメージで、要素を並べて、関係をつないで、全体像を作るという流れを、Balusなしでも自然に思い描くようになりました。もちろん限界はありますけど、それでも考えるプロセス自体が構造的に変わってきたと実感しています。
Balusは、単なる可視化ツールではなくて、思考様式を内面から変える力を持っている。そういう意味でも、導入して良かったと思っています。
天辰さん
現在のBalusも十分に便利ですが、共有機能がさらに充実するとありがたいと感じています。例えば「AIボタン」は要約を生成してくれますが、作成した内容をそのままの文章で書き出せる機能があると非常に助かります。
というのも、僕はBalusで整理した内容をChatGPTなどの他のツールに転用して活用しているため、テキスト化の手間がボトルネックになっているんです。
現状では、画像を貼り付けて文字を抽出して…という非効率な方法で対応していますが、このプロセスがもっとシームレスになれば、思考から資料化への流れが途切れずに済むと思います。
理想を言えば、「to-text」や「text-to-Balus」のように、双方向で行き来できるような世界観が実現されると嬉しいです。さらに言えば、Balusの横に一緒に考えを深めてくれるAIのような存在がいれば、すごく面白いと思います。
これは以前からずっと感じていることですが、Balusは「考えることそのもの」を支えるツールだと思っています。
PowerPointは「伝えるためのツール」、Excelは「計算のためのツール」として定着していますが、「考えるためのツール」という位置づけのものは、世の中にほとんど存在していないんですよね。手書きのメモはありますし、近いところではマインドマップツールがありますが、これだけ構造を自由に表現できるデジタルツールはほとんど見当たりません。
Balusは、構造化と思考を本質的に結びつけるユニークな存在です。他にはない価値を持った、本当に希少なツールだと思います。